理念と目的

「消費者」から「生活者」へ

これまで一般的に「消費者」と呼ばれてきた言い方を、私たちは「生活者」と言い改めます。
単に「もの」や「こと」を消費し、享受するだけでなく、社会生活の主軸となって、もっと能動的に物事に関わる主体的な存在として「生活者」という言葉をとらえていきます。
つまり、“賢い生活者”になって、市場の嘘やごまかしを減らしていこうということです。ただ、従来のいわゆる消費者運動とは少し異なります。これまで、企業のもつ“悪”を摘発し、利害の異なる敵対関係にあるのが「消費者運動」だとすれば、私たちはそうした「対立」よりも、「対話」や「交流」によって“より透明な市場”を、“より信頼できる市場”を生み出したいと考えます。

「見えない」から「見える」へ

たとえば、私たちが口にする食品には、さまざまなリスクが生じるようになりました。放射能汚染、残留農薬、薬物混入、BSE問題、原産地の偽装表示、流通過程での書き換えなど、生活者の不安や疑念を増幅する要素は枚挙に暇がありません。
だからこそ、安全で安心な食材が求められています。
しかし、実際に安全の保証はどこにあるのか、誰が認めているのか、その情報は確かなのか、など、見えないことがたくさんあります。
これは食品にかぎりません。私たちの生活に関わるさまざまなモノには、常に安全性や信頼性が求められていますが、その情報の真偽は、利用者には容易に判断できないことが多いのも事実です。
そこで私たちは、さまざまなバイアスを排除して、生活者のスタンスで自ら取材して学び、情報収集や検証、意見交換を行っていきたいと思います。

「リスクコミュニケーション」と「安心」

リスクに関するあらゆる情報や意見を交換することを「リスクコミュニケーション」といいますが、何がリスクで、どう防げばよいか、という情報を共有し、学びあうことは大切です。たとえば、国民生活センターや消費生活センターなどでは、おもに危害情報を伝えています。これらはリスク回避のために認識しておきたい情報です。
しかし私たちは同時に、安心できる情報、活用できる確かな情報も求めています。
危険な商品、悪い商品だけでなく、安全な商品、優れた商品の情報も必要としています。利用者にとっての確かな「安全」や「優良」を、どう判断し、どう理解するかということを、さまざまな分野の専門家の知恵を借りながら、私たち自身が常に情報を交換し、多面的に検証していきたいと思っています。

「何を買うか、何を買わないか」

生活者の意見をしっかりと行使できるひとつの方法に、「モノを買うか、買わないか」という選択があります。たとえば不買運動は、企業が恐れるひとつの市民運動です。私たちのメッセージを伝える目的で、こうした行動は大切な社会活動です。
同時に、「買う行為」もまた大切なメッセージです。何に信頼や価値を見ているか、何を大切だと考えているか――こうした主張や意見を行動に移すことができるひとつの方法が、「買う」という選択です。適正な「買う行為」は、良い商品、良い企業、良い市場を醸成する、ということでもあるのです。
「CMでよく見るから買う」、「友だちがいいと言うから買う」、「流行っているから買う」といったあやふやな購買行動は、こと食品や健康商品に関しては命取りにもなりかねません。ハードルは高いでしょうが、信頼の根拠を確認したうえで、良いものを良いと自信をもって言える購買行動を広げていきたいと考えます。

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